AIはどこまで進化したのか
AIという言葉はもう新しくない。最近では様々な場面で当たり前のように使われている。ただ、私たちは本当にAIは何ができるのか、どこまで進化しているかを理解できているだろうか。
今回は、主に波頭亮『AIとBIはいかに人間を変えるのか』(幻冬社、2018)を参考にする。
ディープラーニングという革命
AI研究の歴史は意外と長い。コンピュータが登場する1930年代に始まり、過去2回のAIブームがあった。しかし、2012年より現在に至る第3次AIブームにおいて登場したディープラーニングは革命的だったのだ。
ディープラーニング登場までの機械学習は全ての情報を処理しようとするアプローチであったため、ノイズの存在が精度向上の制約となったり、膨大な時間とエネルギーを要するといった課題を抱えていた。しかしディープラーニングによって統計的/確率論的な情報の取捨選択が行えるようになった(p46〜47)
つまり将棋でいえば、これまではある局面に対し、全てのあり得る手を検討していたが、ディープラーニングはこれまでの経験から良い手になりそうな指し手を抽出して検討することができるようになったのだ。
現在のAIの限界
AIの強みは、膨大な情報分析・処理を迅速に行うことができる点にある。ただ逆にいえば、ある一定量の既存のデータがなければ正確な判断を行うことができない。その他にも、因果関係の判断や、本音と建て前の判断は、難しかったりする。
人間による判断は、各個人それぞれの過去の経験やその時の直感、その時の心情などによって結果が変わってくる。人によって、時と場合によって最適解が異なるのだ。だから多様性が生まれる。AIに求めらるのは多様性ではない。絶対的な最適解なのである。
人間はその多様性によって子孫を残してきた。大袈裟な話に聞こえるかもしれないが、人間がAIに依存しすぎて多様性を奪われてはならない。それは次に述べる仕事が奪われることより厄介なことだ。
AIに仕事を奪われるのか
これまでの機械化・自動化は肉体労働や作業労働(自動車工場など)の部分であった。つまりこれからAIによって仕事が行われる可能性があるのは知的労働の分野である。
AIに仕事を奪われるかの問いの答えはyesだろう。ただあくまでもAIに代替される仕事は人間の能力を超える仕事か、人間にとってつまらない仕事かのどちらかだろう。AIには感情がないので、サービス業の多くは人間が必要となるはずであると考える。(障害者がロボットを遠隔操作し接客するという試みも行われているが、結局一番後ろには、人間の存在があるのだ。)
またこんな話もある。AIに限らず機械による自動化がなかなか進まない。例えばスーパーのレジなどがそうだ。それは何故か。答えは簡単で、「機械化をし自動化するより、人を雇った方がコストがかからないから」である。極端な事を言えば、私たちが低賃金で働き続ければ、AIに仕事を奪われることはないのである。しかしながら、そのように無理に反発するのではなく、技術革新の流れを自然に受け入れることができるようになりたい。人間がもつ創造性があれば、新たな仕事を生み出していけるのだ。
AIとBIはいかに人間を変えるのか (NewsPicks Book)
- 作者: 波頭亮
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
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