みやしろ町から

大学生が「日本のこれから」を考えるブログ

加賀百万石の城下町「金沢」へ(二)

金沢でのゼミ合宿の記録。今回は、2日目に訪れた場所を紹介する。金沢で最も有名な観光地である兼六園金沢城は、そのつくられた場所に注目すると面白い。兼六園下交差点から、紺屋坂をただ登るだけではなくて、ぜひ地形のダイナミズムを感じてみたい。今回はブラタモリ視点から金沢の名勝を堪能していく。(※掲載写真はいずれも私が撮影したものである。)

 

前回の記事はこちらから↓

tymyh1123.hatenablog.com

 

兼六園

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兼六園は5代前田綱紀の時代に築庭が始まった廻遊式庭園であるが、最も有名なのは徽軫灯籠(ことじとうろう)だろう。ただ、それ以上に私が感動することは、その犀川浅野川に挟まれた小立野段丘(こだつのだんきゅう)の上に兼六園がつくられていることである。庭園には水が欠かせない。ただ、自然の摂理から考えれば、段丘の上に水は流れてこない。そう考えればおのずとこの水は(かつて)水路によって引かれたことを推測することができる。それが辰巳用水なのである。

 

※具体的な地形の様子はGoogleマップなどでも体感できる。なお、地形の名称は次のサイトを参考にさせて頂いた。金沢の段丘に詳しいので、是非参照されたい。

http://earth.s.kanazawa-u.ac.jp/ishiwata/terrace.htm

 

辰巳用水の痕跡はブラタモリ(2015年04月25日(土)放送回)でも紹介されていた。現在でも、逆サイフォンの原理によって、金沢城二の丸へ導かれた水道の遺構を見ることができる。本当に過去の人々が築いてきた水利技術に感動するばかりだ。庭園から、卯辰山丘陵と浅野川沖積地に広がる住宅街を臨むことができるのも、兼六園が沖積地に囲まれた高台に位置しているからなのである。そしてその小立野段丘の最も先端、つまり特等席につくられたのが、加賀百万石の城下町のシンボル、金沢城である。

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※木々に覆われているため少し分かりづらいが、奥に見える石垣が辰巳用水の水道の遺構の一部である。兼六園の園内からこの構図で写真を撮る人はなかなかいないだろう。ただ、ブラタモリファンならば押さえておきたいポイント。場所は徽軫灯籠のすぐ裏手にある。

 

金沢城

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金沢城はこれまで何度も火災に遭っているが、現在は菱櫓・五十間長屋・橋爪門続櫓・橋爪門などが復元されている。ただ、それ以上に魅力的なのは、多種多様な石垣を見ることができることだ。金沢城は、「石垣の博物館」ともいわれている。また、先程兼六園で取り上げたような地形的な観点からみると、金沢城は小立野段丘の先端部に位置する。つまり金沢城は、自然の地形を生かした要塞であり、その特徴的な高低差を存分に活かしているのだ。

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※「金沢城の石垣めぐり」マップは、金沢城兼六園HPのリーフレットよりダウンロードが可能。私が見た限り、このマップが一番分かりやすいと思う。金沢城内にも、上写真のような看板が設置されている。さらに、参考文献1p78~79では、金沢城の石垣から「加賀百万石」草創期の歴史を知るコラムもある。

http://www.pref.ishikawa.jp/siro-niwa/new/download/panfu/isigaki.pdf

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※上部に見えるのが自然石積によって積まれた高石垣であり、金沢城で見られる最も古い石垣のひとつである。よく観察すると、石垣に段差があるのはおかしいことに気づく。

ここは、辰巳櫓跡と呼ばれた場所、本丸の要所のひとつで、城下町から見ると最も目立つ櫓だったといいます。本来はひと続きの石垣で、高さは25m以上を誇っていましたが、明治期、旧陸軍第九師団が安全のため、現在のような3段構造に改造したといいます。〔参考文献1,p72~73〕

金沢城加賀藩藩祖である前田利家が入城してから、3代前田利常、5代前田綱紀に至るまで、「野面積み」、「割石積み」、「切石積み」とその石垣の積み方を変化されながら、金沢城の美を追求していったことがわかる。そして現在私たちが多様な石垣を見ることができるのは、幾多の災害に見舞われながらも、加賀百万石の城下町のシンボルとして守られてきたことに他ならない。地形や段差などの高低差、そして石垣の優れた技術に注目することによって、ブラタモリ視点から楽しんでみるのも面白いかもしれない。

 

つづく

 

【参考文献】

  1. NHKブラタモリ」制作班『ブラタモリ1 長崎 金沢 鎌倉』(角川書店、2016年)
ブラタモリ (1) 長崎 金沢 鎌倉

ブラタモリ (1) 長崎 金沢 鎌倉