みやしろ町から

大学生が「日本のこれから」を考えるブログ

「博学連携」のこれから

これから博物館と学校教育との連携、すなわち「博学連携」について考えていきたいと思う。その上で、はじめに学校教育と博物館教育の違いを明らかにしたい。

まず、学校教育はフォーマルな教育である。学校では全国一律で同じことを学ばなければならないことから、体系的・画一的なカリキュラムがあり、制度化された教職員が存在する。そして、そこで学ぶ生徒は同年齢集団で構成され、彼らの学習成果の評価は数値化される。

一方で博物館教育は、ノンフォーマルな教育である。館によって学習内容が多様であり、学習者の年齢に制限は存在しないことから、様々な年代のボランティアや来館者同士の交流がみられる。また、学習成果は必ずしも数値化されないという特徴を持つ。

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※写真は宮代町郷土資料館

 

博学連携の意義

博物館による学校支援が求められる背景として学校と博物館の双方の事情を整理したい。まず学校現場では、2000年に総合的な学習の時間が導入され、自我の形成と個性の伸長が目指されることになった。また博物館では予算などの都合上、その存在意義について周囲からの一定の評価が必要になったことから、学校との連携をやらざるを得ない状況になった。

ではその中で、博学連携の意義をどこに見いだしていくべきだろうか。博学連携の意義の第一は、生徒が地域の郷土の歴史、又は自然環境などを学ぶことができることにあるだろう。博物館のコレクションは地域によって特性を持つため、それぞれの地域博物館でそれぞれの地域に合った学びを提供することができる。加えて、学校現場ではなかなか使うことのできない実物のモノ資料を教育の中で扱い、学芸員のような専門的な研究をする人の話を直接聞くことによって、生徒のより深い学びにつなげることができるかもしれない。

そして第二の意義として、博物館のような社会教育施設に親近感を持ってもらえる可能性が増すだろう。生涯学習が必要になってきた現代社会の中で、博物館が学びの一つの手段であり続けることができるために、学校教育の中に博物館を取り入れることは、大きな意味を持つと考えられる。

 

博学連携に求められる留意点

まず、注意しなければならないことは、館の収集するコレクションによって学習することのできる内容が限定されることである。この点はもちろん博物館の分野についても同じことが言えるわけであり、必ずしも教員の望むような内容を博物館で学習することができるとは限らない。よって、博物館の持つ特徴を最大限に生かしていくことができるように配慮をしていく必要がある。

次に注意すべきことは、博物館の教育機能を過大評価してはならないということである。博物館はあくまでも資料を保存・収集する研究機関であることは忘れてはならない点であり、果たすべき役割はすでにしっかりと持っているわけだから、博物館に過度な教育的効果を求めるのは間違いであろう。そして博物館への生徒の接し方も注意を向けていきたい。無理矢理博物館へ連れて行かれ、課題を課せられるなどの、博物館で学習させられるような体験は博物館に対するイメージを悪くし、逆に生徒と博物館との距離を遠ざけてしまう可能性もある。

以上のように留意すべき点はいくつもあるわけだが、いずれにおいても、教員と学芸員が博学連携の意義について理解を深め、実際の連携の際には意思疎通を図りながらプログラムを企画したり、相互に交流したりすることによって配慮をすることができるはずである。あくまでもよりよい教育活動の展開のための手段として連携があることを念頭に入れながら、生徒が主体となるような博学連携を進めていけば、それは大きな意義を持つだろう。