みやしろ町から

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私が史学科に興味のある高校生へ絶対に勧めたい一冊の本

私は現在、歴史学科に所属する大学4年生です。今回は、私がこの4年間で読んできた3桁の数の本の中から、史学科・歴史学科に興味のある高校生に是非読んでほしい本を紹介します‼︎熱が入ってしまったので、かなり長文になってしまいましたが、最後まで読んで頂けると嬉しいです。

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この本が私が一番オススメする本です。

一ノ瀬俊也『昭和戦争史講義-ジブリ作品から歴史を学ぶ』(人文書院、2018年)について、その魅力を読むべき5つの理由を踏まえながら詳しく紹介していきます。

まず、本書の目次は以下の通りです。

第一講 お話したいこと

第二講 大衆社会の出現-関東大震災(『風立ちぬ』①)

第三講 飛行機と戦争-三菱はなぜ二郎を傭い飛行機を造るのか(『風立ちぬ』②)

第四講 貧困と戦争-シベリアと満州事変(『風立ちぬ』③)

第五講 飛行機と戦艦の主役交代-二郎のドイツ行きをめぐって(『風立ちぬ』④)

第六講 社会主義ゾルゲ事件とその背景(『風立ちぬ』⑤)

第七講 病と結婚-二郎の結婚はなぜさびしいのか(『風立ちぬ』⑥)

第八講 日中戦争-九六陸攻重慶爆撃(『風立ちぬ』⑦)

第九講 日米戦争-零戦が対米戦争で果たした役割(『風立ちぬ』⑧)

第一〇講 日本とイタリア、そしてアメリカ-恐慌のなかで(『紅の豚』)

第一一講 空襲-神戸はなぜ炎上したのか(『火垂るの墓』①)

第一二講 飢え-戦争末期の国民生活(『火垂るの墓』②)

第一三講 敗戦-人びとは何を思ったのか(『火垂るの墓』③)

第一四講 戦争孤児-皆どこへ行ったのか(『火垂るの墓』④)

第一五講 高度成長-まとめにかえて(『となりのトトロ』・『コクリコ坂から』・『平成狸合戦ぽんぽこ』)

それでは本書を読むべき5つの理由を紹介していきます。

 

①第一線で活躍する歴史学者が一般の人向けに(高校生へ向けて)書いている

本書の著者である一ノ瀬俊也(いちのせ・としや)氏は現役で活躍されている歴史学者(大学教授)です。日本近現代史を専門とされていますが、この世界ではかなり有名な方です。

ところで、世の中には歴史に関する本が数えきれないほどあるわけですが、その全てを歴史学者が書いているわけではありません。例えば、司馬遼太郎氏などは有名ですが、氏は歴史学者ではなく小説家です。確かに歴史学者ではない人が書く本でも良い本はたくさんあるのですが、史実の正確性の点では歴史学者の方がまさっていると思います。(ただし、正確にいえば歴史解釈は学者ごとに異なります。また、事柄によっては学者間で歴史解釈が大きく対立している場合もあります。ex,邪馬台国における近畿説と九州説の対立など)

研究の世界で有名な学者が書いているので、安心して読むことができますし、一般の人向けに分かりやすく丁寧に書いているので、非常に読みやすくなっています。

 

②話し口調なので、実際に大学の講義を疑似体験することができる

どうしてここまで読みやすいかというと、本書が氏が埼玉大学で実際に行った講義を文章化したものだからです。そのため、少なくとも初学の大学生でも分かるように説明がなされています。例えば、「社会主義共産主義の違いは何か」など、基本的な用語から専門家が分かりやすく解説しています。もちろん、だからといって内容が薄いわけでなく、学術的に深い話が盛りだくさんです。

また、話し口調で書かれているので実際の大学の授業を疑似体験している気分になれます。本書の価格は1800円+税ですが、たったそれだけの価格で大学の半期分の講義(通常大学の半期の授業回数は15回)を体験することができるなんて、お得すぎませんか‼︎(笑)

 

③1講あたり15分〜20分程度で読むことができる

歴史関係の本を読んでいて、途中で挫折してしまった経験はないでしょうか?実際の学術書は厚いものが多いですが、この本なら15講に分かれていているので、1講あたり15分〜20分程度で読むことができます。通学・通勤中にも気軽に読むことができますし、かつ映画のシーンや資料写真なども適宜挿入されているので、読んでいて飽きることはありません。

 

ジブリ映画を歴史的に解釈するというテーマが面白い

とにかく本書の魅力は扱う題材です。本書は主に『風立ちぬ』『火垂るの墓』『紅の豚』の3作品を扱っていますが、いずれも人気作品でしょう。映画評論は聞いたことがあっても、それぞれの作品を歴史学的な視点で見た人はいないのではないでしょうか。映画評論で有名な、岡田斗司夫氏や町山智浩氏、宇多丸氏らでも語れないようなジブリ解釈を是非堪能して頂きたいです。また、上の3作品を見たことがない方でも、本書を読んでから映画を観るとより一層作品を楽しむことができると思います。国民的アニメーション×歴史学の組み合わせはなかなか見られないとても貴重な一冊なのです‼︎

 

⑤註釈、参考文献が丁寧に記されている

実はこの点が一番重要です。大学生は、教科書などの教材だけでなく、初めて学術論文を読むという経験をします。実は本書の各講はしっかりと論文の体裁をとっていて、本文中にきちんと註釈があり、各講の最後に参考文献が記されています。つまり、本書を読むだけでミニ論文を15本も読むことになるのです。論文の詳しい読み方は大学に入ってから学ぶと思いますが、論文ってこんな感じなんだというのが分かると、大学生になって本格的な論文を読む際の抵抗が少なくなると思います。

また、参考文献だけでなく、各講でそれぞれもう3冊、一ノ瀬氏の解説付きで本が紹介されています。その講を読んで、さらに詳しく知りたい人が次に読むべき本を教えてくれるのです。まさに、大学の教授から直接指導をして頂いている気分♪ 私も紹介されている本を一通り読んでみましたが、レベルとしては+αなので少し難しい本も多いです。ただ、史学科の学生になった際にはこの程度のレベルの学術書を読むことになるので、興味のあるテーマの本を一冊でも読んでみることをオススメします。

 

以上の理由から、私は絶対にこの一冊をオススメします。高校生でなくても、歴史に興味があ方、ジブリが好きな人なら絶対に読んで良かったと思える本だと思います。是非読んでみて下さいね。

昭和戦争史講義: ジブリ作品から歴史を学ぶ

昭和戦争史講義: ジブリ作品から歴史を学ぶ