国立科学博物館「恐竜博2019」へ
先日、東京上野の国立科学博物館へ「恐竜博2019」を見に行った。今は、恐竜博2019の図録を見ながらこの記事を書いている。今回は、恐竜博2019の感想や学びについて書いていきたい。ちなみに、特別展の展示は5つのチャプターに分かれている。展示の楽しみ方についても触れていきたい。(※掲載写真はいずれも私が撮影したものである。)
【恐竜博2019】
Chapter1 恐竜ルネサンス
Chapter2 ベールを脱いだ謎の恐竜
Chapter3 最新研究から見えてきた恐竜の一生
Chapter4 「むかわ竜」の世界
Chapter5 絶滅の境界を歩いて渡る
デイノケイルス
本展示の目玉のひとつであるデイノケイルスが発見されたのは、モンゴルの砂漠地帯である。初めて発見された当初は、その巨大な前足しか見つからなかったことから、実際の姿を想像することは難しかった。実際にデイノケイルスのまえ足(写真左・複製)の前に立ってみて、スケール感を体感してみる。彼らは雑食性の恐竜だったそうだが、名前の由来にもなったその恐ろしい手に襲われたら、きっとひとたまりもないのだろう。
そしてChapter2では、世界初公開であるデイノケイルスの全身復元骨格で、その迫力を体験することができる。全長11メートルだから足元から見上げるような形になるのだ。
また忘れてはならないのが、デイノケイルスの実物化石(写真右・実物)を見ることである。平らで先端が丸くなっている足の末端骨を持っていることで、不安定な湿地帯でもゆっくり歩くことができたという。複製模型だけでなく、実物の化石もじっくり観察してみると、他の恐竜化石との違いや共通点を発見することができるかもしれない。
カムイサウルス(むかわ竜)
北海道むかわ町穂別で発見されたむかわ竜は、2019年9月6日に新属新種に正式に認定されることになった。学名は「日本の竜の神」を意味する「カムイサウルス・ジャポニクス」である。その全身復元骨格(上写真・複製)はもちろん迫力があり、写真スポットではあるが、その足元にある、全身実物化石(下写真左・実物)も忘れずに見ておきたい。もちろん世界初公開である。これらの化石が実際に地面に埋まっていたかと思うと感慨深い。
恐竜の骨格化石は黒色や茶色などの場合が多い。骨は白かったはずなのだが、化石化の過程で、地層中の地下水の色などが染み込んで、着色されてしまった結果である。
〔恐竜博2019図録 p11〕
実物化石には複製にはない、色味の味がある。そんな実際に生きていた生物が化石となった歴史を感じながら展示をみると、より臨場感を味わうことができるだろう。
↓むかわ竜については以下の記事にも詳しく書いたので是非参照されたい。
展示をもっと楽しむために
展示をもっと楽しむために、是非買って読んでほしいのが、本展示の公式図録(上写真右)である。184ページのボリュームでオールカラーなのに2200円という破格の安さである。内容も本格的で、国を問わず多くの研究者によるエッセイも収録されており、そのまま研究の基礎文献となり得るほどの完成度である。
展示場ではゆっくりキャプションを読むことができない人が多いのではないだろうか。私はキャプションしっかり読みたいのと、恐竜研究の最前線をさらに詳しく知りたいという目的で図録を買っている。展示化石の写真も網羅されているので、展示を家に帰ってもう一度じっくり堪能したい方は是非手元に置いておきたい。
↑恐竜学の本の中でも初学者が手に取りやすい本を紹介している。とはいえ研究者が読んでも勉強になるような本で、専門研究書と子供向けの本のちょうど中間に位置すると考えてよいと思う。恐竜は生物学の知識があるとより面白く理解できるが、少し勉強してから展示を見ると、より深い理解を得ることができる。予習は意外と大切だ。そして図録で復習も忘れずに。
また特別展を見終わったら、追加料金なしでそのまま通常展も見ることができる。地球館と日本館は正直一日かけても見終わらないくらいのボリュームだと私は思っている。個人的にはトリケラトプスの全身骨格(上写真・実物)はその美しさを是非見て頂きたいが、自分の好きなテーマの展示をじっくり見て回るのがおススメである。
古生物学はロマンの学問であり、その常識は日進月歩で変わり続ける。来るたびに新しい発見がある、恐竜博に是非足を運んでみるのはいかがだろうか。